ベンチプレスとダンベルプレスの換算早見表!MAX重量やレベル別の目安を解説

ダンベルプレスとベンチプレスの重量換算は、「片手のダンベル重量×2が、ベンチプレス重量の約8割」が一般的な目安です。片手の重量を約2.5倍するとベンチプレスの数値に近づき、片手40kgならベンチプレス約100kgに相当します。ただし、ダンベルは左右を別々に安定させる必要があり、可動域も広いため、種目への慣れや左右の筋力差によって実際の数値は前後します。この記事では、重量別の換算早見表、反復回数から最大挙上重量を推定するRM法の計算式、初心者から上級者までのレベル別目安、換算値がずれやすいケースの注意点を紹介します。

1. ベンチプレスとダンベルプレスの換算が必要な理由

ベンチプレスとダンベルプレスは、どちらも大胸筋・三角筋前部・上腕三頭筋を主に使うプレス種目です。ただし、同じ人が同じように胸を鍛えるつもりで行っても、扱える重量は種目によって変わります。片方の種目の重量をもう片方にそのまま当てはめると、軽すぎて狙った回数で追い込めなかったり、重すぎてフォームが崩れたりします。換算は、種目を切り替えるときに最初の重量を決める目安として使います。

扱える重量に差が出る主な理由は、器具の構造と動作の違いです。

比較項目 ベンチプレス ダンベルプレス
重量の表記 バーとプレートを合わせた総重量で表す 片手1個あたりの重量で表すのが一般的
左右の連動 1本のバーで左右がつながっている 左右の腕がそれぞれ独立して動く
バランスの取り方 バーで左右がつながっているため比較的安定する 前後左右のぶれを自分の筋力で抑える必要がある
可動域 バーが胸に触れた位置で下降が止まる ダンベルを胸の高さより深く下ろせる
重量の調整 プレートの付け替えで細かく調整できる 固定式は1個ごとに重さが決まっており、調整の幅が大きくなりやすい
セットの始め方 ラックからバーを外して始める ダンベルを持ち上げてからベンチに寝て構える

ダンベルプレスでは左右の腕が別々にダンベルを支えるため、筋力の一部がダンベルのぐらつきを抑えることに使われます。その結果、両手のダンベルを合計した重量は、ベンチプレスで挙げられる重量より軽くなるのが一般的です。どの程度軽くなるかの目安は、次の章の早見表で示します。

重量の表記方法の違いも、換算が必要になる理由のひとつです。たとえばベンチプレス60kgを挙げられる人が「片手30kgずつなら合計60kgで同じ」と考えると、実際には重すぎる重量を選ぶことになりやすくなります。総重量で表すバーベルと、片手の重量で表すダンベルは、数字を単純に足したり割ったりしても同じ負荷にはなりません。

換算が役立つのは、たとえば次のような場面です。

  • 自宅にダンベルしかなく、ベンチプレスの代わりにダンベルプレスで胸を鍛える場合
  • ジムでベンチプレス台が埋まっていて、その日だけダンベルプレスに切り替える場合
  • ベンチプレスの記録を伸ばすことが目標で、ダンベルプレスの重量から現在の実力を推定したい場合
  • 「最大重量の〇%で〇回」と指定されたトレーニングメニューを、ダンベルプレスで実施する場合

安全面でも、事前に重量の目安を知っておくことには意味があります。ベンチプレスはセーフティバー付きのラックを使えば、挙げきれなかったバーを受け止められます。一方、ダンベルプレスにはその仕組みがなく、限界付近でつぶれた場合はダンベルを体の横に下ろすか、補助者に支えてもらう必要があります。また、重いダンベルはベンチに寝て構えるまでの動作でも肩や手首に負担がかかります。換算の目安から最初の重量を軽めに設定すれば、慣れていない種目で限界を超える重量を選ぶリスクを減らせます。

2. ベンチプレスとダンベルプレスの重量換算早見表

ダンベルプレスとベンチプレスを換算するときは、ダンベル2個の合計重量がベンチプレスの約80%(目安の幅は75〜85%)という比率がよく使われます。片手の重量に換えると、ダンベル片手分はベンチプレスの約40%です。

ダンベルのほうが扱える重量が軽くなるのは、左右の腕がバーでつながっておらず、それぞれの腕でダンベルのふらつきを抑える必要があるためです。また、ダンベルはバーベルより深く下ろせるため可動域が広くなりやすく、重いダンベルではスタート位置まで持ち上げる動作も負担になります。このため、合計重量が同じでも、ダンベルのほうが挙上は難しくなります。

以下の早見表は、次の条件を前提にした目安です。

  • フラットベンチで行う場合(インクラインやデクラインは対象外)
  • 同じ回数どうしで比べる場合(1回の最大重量どうし、10回できる重量どうしなど)
  • ベンチプレスの重量はシャフトの重さを含む(ジムで一般的なオリンピックシャフトは20kg)
  • 可変式ダンベルの場合は、シャフトやカラーの重さも含めて計算する

回数が異なる記録どうしを比べる場合は、先に最大重量へ置き換える必要があります。その方法は次の章で扱います。

2.1 片手ダンベルからバーベルへの換算目安

ダンベルプレスの記録からベンチプレスの重量を推定するときは、片手の重量を2倍にして0.8で割る(片手の重量×2.5)と計算できます。たとえば片手20kgのダンベルで10回挙げられる人は、ベンチプレスで約50kgを10回挙げられる計算になります。

次の表では、中心値(80%で計算)に加え、75〜85%の幅で計算した範囲も示しています。ジムで多い2kg刻みのダンベルを基準にしています。

片手のダンベル重量 2個の合計重量 ベンチプレス換算(中心値) ベンチプレス換算(目安の幅)
10kg 20kg 約25kg 約24〜27kg
12kg 24kg 約30kg 約28〜32kg
14kg 28kg 約35kg 約33〜37kg
16kg 32kg 約40kg 約38〜43kg
18kg 36kg 約45kg 約42〜48kg
20kg 40kg 約50kg 約47〜53kg
22kg 44kg 約55kg 約52〜59kg
24kg 48kg 約60kg 約56〜64kg
26kg 52kg 約65kg 約61〜69kg
28kg 56kg 約70kg 約66〜75kg
30kg 60kg 約75kg 約71〜80kg
32kg 64kg 約80kg 約75〜85kg
34kg 68kg 約85kg 約80〜91kg
36kg 72kg 約90kg 約85〜96kg
38kg 76kg 約95kg 約89〜101kg
40kg 80kg 約100kg 約94〜107kg

自分がどの値に近いかは、普段のトレーニング内容で変わります。ダンベル種目を中心に練習している人は、ダンベルの扱いに慣れているぶん、表の下限寄りのベンチプレス重量にとどまる傾向があります。反対に、ベンチプレスを中心に練習している人は上限寄りになりやすいです。

ダンベルプレスの記録だけを頼りに、初めてベンチプレスで表の上限に近い重量を試すのは避けてください。バーベルの軌道やラックからの受け渡しに慣れていない状態では、挙上できずにバーが胸の上で止まるおそれがあります。初回は表の下限よりさらに軽い重量から始め、補助者をつけるかセーフティバーを設定して確認するのが安全です。

2.2 バーベルからダンベルへの換算目安

ベンチプレスの記録からダンベルプレスで使う重さを決めるときは、ベンチプレスの重量に0.8を掛けて2で割る(ベンチプレスの重量×0.4)と、片手の目安が求められます。たとえばベンチプレスで60kgを8回挙げられる人なら、ダンベルは片手約24kgで8回が目安です。

ベンチプレスの重量 ダンベル2個の合計(中心値) 片手のダンベル重量(中心値) 片手のダンベル重量(目安の幅)
40kg 約32kg 約16kg 約15〜17kg
50kg 約40kg 約20kg 約19〜21kg
60kg 約48kg 約24kg 約22.5〜25.5kg
70kg 約56kg 約28kg 約26〜30kg
80kg 約64kg 約32kg 約30〜34kg
90kg 約72kg 約36kg 約34〜38kg
100kg 約80kg 約40kg 約37.5〜42.5kg
110kg 約88kg 約44kg 約41〜47kg
120kg 約96kg 約48kg 約45〜51kg
130kg 約104kg 約52kg 約49〜55kg
140kg 約112kg 約56kg 約52.5〜59.5kg

ジムの固定式ダンベルは2kg刻みや2.5kg刻みで並んでいることが多く、計算どおりの重さがない場合があります。その場合は、計算値より軽い側のダンベルを選び、目標回数を余裕をもってこなせるか確認してから重くすると、フォームを崩さずに重量を合わせられます。

ベンチプレスが強い人ほど、ダンベルの重さそのものが別の負担になります。片手40kgを超えるようなダンベルは、膝の上から反動を使って仰向けのスタート姿勢に入るまでにも大きな力が必要で、終了時にダンベルを床へ下ろす動作でも肩を痛めやすくなります。ベンチプレスで100kg前後以上を挙げる人は、表の中心値ではなく下限寄りの重さから試すと、セット前後の動作まで含めて安全に扱える重量を見極めやすくなります。

3. ダンベルプレスからベンチプレスのMAX重量を算出する計算式

ダンベルプレスの記録からベンチプレスのMAX重量(1RM)を推定するには、次の3段階で計算します。

手順 計算内容 計算式
1 ダンベルプレスの重量と回数から、片手あたりの1RMを推定する 片手重量 × 回数 ÷ 40 + 片手重量
2 片手の1RMを2倍して、左右合計の重量にする 片手1RM × 2
3 左右合計の重量をバーベルの重量に換算する 左右合計 ÷ 0.8

手順3の「0.8」は、ダンベルプレスの左右合計重量はベンチプレスの約8割になるという、トレーニング現場で広く使われている目安です。ダンベルは左右が独立して動くため、バランスを取る分だけバーベルより扱える重量が下がります。ただし、この比率は個人のフォームや経験によって変わるため、計算結果は推定値として扱ってください。

3.1 RM法を用いた換算の仕組み

RM(レペティション・マキシマム)とは、ある重量で反復できる最大回数のことです。1回だけ挙げられる重量を1RM、10回まで挙げられる重量を10RMと呼びます。RM法では、MAX重量を実際に試さなくても、余力なく反復できた回数から1RMを逆算できるため、高重量のダンベルを扱う際のケガのリスクを抑えられます。

3.1.1 RMと1RMに対する割合の対応表

回数ごとに、1RMの何%の重量に相当するかを示したのが次の表です。米国のNSCA(全米ストレングス&コンディショニング協会)が示す換算表として、国内の指導現場でも広く使われています。

反復できた回数 1RMに対する割合
1回 100%
2回 95%
3回 93%
4回 90%
5回 87%
6回 85%
7回 83%
8回 80%
9回 77%
10回 75%
12回 67%
15回 65%

この表を使う場合は「使用重量 ÷ 割合」で1RMを求めます。たとえば片手24kgで8回挙げられたなら、24 ÷ 0.80 = 30kgが片手の推定1RMです。

3.1.2 主な1RM推定式の比較

表を参照する代わりに、計算式で1RMを求める方法もあります。代表的な推定式は次の3つで、同じ記録でも式によって結果に差が出ます。

推定式 計算式 片手24kg×8回の場合
オコナー式 重量 × 回数 ÷ 40 + 重量 28.8kg
エプリー式 重量 × (1 + 回数 ÷ 30) 約30.4kg
ブジツキー式 重量 × 36 ÷ (37 − 回数) 約29.8kg

国内のジムや筋トレ計算サイトで多く採用されているのはオコナー式で、3つの中では推定値が低めに出ます。どの式を使っても、毎回同じ式で計算すれば、成長の推移を比較する目的には十分です。

3.1.3 計算例:片手24kgで8回挙げた場合

オコナー式を使って、ベンチプレスのMAX重量まで換算すると次のようになります。

手順 計算 結果
片手の1RM 24 × 8 ÷ 40 + 24 28.8kg
左右合計 28.8 × 2 57.6kg
ベンチプレス換算 57.6 ÷ 0.8 72kg

この場合、ベンチプレスのMAX重量は約72kgが推定値になります。

3.1.4 推定精度を高めるための条件

RM法は、反復回数が多くなるほど推定の誤差が大きくなる傾向があります。特にダンベルプレスは、回数を重ねると重量そのものより肩周りの安定性や握力が先に限界を迎えやすく、筋力を正しく反映しにくくなります。精度を保つには、次の条件で記録を取ってください。

  • 10回以内で限界を迎える重量を使う
  • フォームが崩れずに挙げきれた回数だけを数える
  • 補助者の手助けを受けた回は回数に含めない
  • ベンチはフラットに設定し、インクラインの記録は使わない
  • ダンベルを胸の横まで下ろし、毎回同じ可動域で行う

3.2 計算機を使わずに自分で換算する方法

ジムでスマートフォンの計算機を開かずに確認したい場合は、3つの手順をまとめた「換算係数」を覚えておくと便利です。オコナー式と「左右合計 ÷ 0.8」を一つにまとめると、ベンチプレスの推定MAX = 片手のダンベル重量 × 換算係数という1回のかけ算で済みます。

反復できた回数 1RM係数(オコナー式) ベンチプレス換算係数
3回 1.075 約2.7
5回 1.125 約2.8
6回 1.15 約2.9
8回 1.2 3.0
10回 1.25 約3.1
12回 1.3 約3.3

換算係数は「1RM係数 × 2 ÷ 0.8」で求めた値で、小数点第2位を四捨五入しています。8回挙げられた片手の重量を3倍すれば、ベンチプレスの推定MAXになると覚えておくと、暗算でもすぐに確認できます。たとえば片手20kgで8回なら20 × 3 = 60kg、片手30kgで5回なら30 × 2.8 = 84kgが目安です。

3.2.1 練習重量を逆算する使い方

同じ係数を使えば、ベンチプレスの記録からダンベルプレスの練習重量を決めることもできます。計算は「ベンチプレスのMAX ÷ 換算係数」です。ベンチプレスのMAXが90kgの人が8回を目標にするなら、90 ÷ 3 = 30kgが片手の目安になります。

ジムのダンベルは2kg刻みや2.5kg刻みのものが多く、計算どおりの重量がない場合もあります。その場合は軽い側のダンベルを選び、目標回数を挙げきれたら次回から重量を上げると、フォームを崩さずに調整できます。

3.2.2 自分専用の比率を出す方法

「0.8」という比率は平均的な目安のため、ダンベルプレスに慣れているかどうかで実際の値はずれます。ベンチプレスとダンベルプレスの両方の記録がある人は、次の式で自分の比率を求められます。

求める値 計算式 計算例
自分の比率 ダンベル左右合計の1RM ÷ ベンチプレスの1RM 56kg ÷ 80kg = 0.7

算出した比率を手順3の「0.8」と入れ替えれば、以降の換算で自分の実力に合った推定値を出せます。比率はトレーニングを続けるうちに変わるため、両方の種目で記録を更新したタイミングで計算し直すと、推定値と実際の重量との差を小さく保てます。

4. レベル別にみるベンチプレスとダンベルプレスの実力目安

ベンチプレスとダンベルプレスの重量比は、トレーニング歴によって変わります。一般的な換算の目安は「ダンベル両手の合計重量がベンチプレスの70〜80%程度」とされますが、この比率はすべての人に同じように当てはまるわけではありません。初心者はダンベルを安定させる技術が未熟なため比率が低く出やすく、中級者で目安に近づき、上級者になると再び比率が下がる傾向があります。ここでは、レベルごとの重量の目安と、換算値がずれる理由を整理します。

4.1 初心者から中級者における換算値の違い

初心者から中級者の段階では、ベンチプレスとダンベルプレスの両方が伸びやすく、換算値も変動しやすい時期です。まずは自分の重量がどのレベルにあたるかを確認し、そのうえで換算値のずれを読み取ります。

4.1.1 体重70kgの男性を例にしたレベル別の目安

ベンチプレスのレベル分けでは、1RM(1回だけ挙げられる最大重量)が体重の何倍かで判断する方法が広く使われています。以下は、体重70kgの男性を例に、その体重比とダンベルプレス片手重量の目安を示したものです。ダンベルの重量は、レベルごとの比率の傾向を反映して算出しています。

レベル ベンチプレス1RMの体重比 ベンチプレス1RM(体重70kg) 両手合計の比率の傾向 ダンベルプレス片手1RMの目安
初心者 体重の0.5〜0.75倍 約35〜50kg 65〜75%程度 約12〜18kg
中級者 体重の1.0〜1.25倍 約70〜87kg 75〜80%程度 約26〜35kg
上級者 体重の1.5倍以上 約105kg以上 70〜75%程度 約37kg以上

体重比の区切りは基準を示す資料によって多少異なるため、この表は目安として使ってください。女性の場合は、同じレベルでも体重比が男性より低めに設定されるのが一般的です。また、ジムのダンベルは2kgや2.5kg刻みで用意されていることが多いため、実際には表の数値に近い重さを選ぶことになります。

4.1.2 初心者の換算値が低く出やすい理由

ベンチプレスはバーで両手がつながっているため、バーベルの軌道がある程度安定します。一方、ダンベルプレスは左右の腕がそれぞれ独立して重量を支えるため、肩関節まわりの筋肉で前後左右のぶれを抑えなければなりません。トレーニングを始めて間もない人は、このぶれを抑える筋力と神経系の働きが十分に発達していないため、ダンベルプレスの重量がベンチプレスほど伸びないことがよくあります。

そのため、初心者がベンチプレスの数値から換算したダンベルの重量を選ぶと、想定より挙がらない場合があります。初めてダンベルプレスを行う人は、換算値よりも軽い重量から始め、左右がぶれずにコントロールできることを確認してから重くするのが安全です。

4.1.3 中級者で換算値が安定しやすい理由

トレーニング歴が1年前後になり、ダンベルの扱いに慣れてくると、ダンベルを安定させる能力が上がって比率が一般的な目安に近づきます。この段階では換算値が実力を比較する基準として機能しやすいため、自分の比率から弱点を推測することもできます。

自分の比率の状態 考えられる原因 取り組むとよいこと
目安より大きく低い ダンベルを安定させる力の不足、左右の筋力差 ダンベルプレスの頻度を増やし、左右で挙がり方に差がないか確認する
目安とほぼ同じ 両種目の能力がバランスよく伸びている 現在のメニュー構成を続け、両種目の記録を定期的に比べる
目安より高い ベンチプレスのフォームや挙上技術が未完成 ベンチプレスのフォーム(肩甲骨の寄せ、足の踏ん張り、バーの軌道)を見直す

なお、比率を比べるときは、ベンチの角度(フラット)、下ろす深さ、反動の有無など、両種目の条件をそろえて計測することが前提です。ダンベルを浅く下ろした記録とベンチプレスの記録を比べても、正しい比率にはなりません。

4.2 上級者が知るべき重量換算の限界と注意点

ベンチプレスが100kgを超えるような上級者になると、換算値と実際の重量のずれが大きくなりやすくなります。これは筋力の問題だけでなく、器具の扱い方や種目ごとの技術差が影響するためです。

4.2.1 重いダンベルではセッティングが記録を左右する

ダンベルプレスでは、床やラックからダンベルを持ち上げ、太ももに乗せてから仰向けになり、胸の横に構えるまでの動作(オンザニーと呼ばれる方法など)が必要です。片手30〜40kgを超えると、この構えるまでの動作で体力を消耗したり、姿勢が崩れたりして、本来挙げられるはずの重量に届かないことがあります。ベンチプレスはラックからバーを外すだけで始められるため、この差は重量が上がるほど大きくなります。

また、ジムによって置いてあるダンベルの上限は異なり、40kg前後までしか用意していない施設もあります。換算上は片手45kgが適正でも、そもそもその重さで行えない場合があるため、上級者は回数を増やすことで負荷を調整する必要があります。

4.2.2 ベンチプレス特有の技術で差が広がる

上級者のベンチプレスでは、胸を高く張るブリッジ(アーチ)、足で床を押す力を利用するレッグドライブ、手幅の調整などによって、バーを動かす距離を短くし、全身の力を使って挙げています。これらの技術はバーベルだからこそ効果を発揮しやすく、ダンベルプレスには同じ形で応用しにくいものです。

要因 ベンチプレス ダンベルプレス 換算値への影響
可動域 バーが胸に当たる位置で止まる 胸より深く下ろせる ダンベル側の負担が大きくなり比率が下がる
フォーム技術 ブリッジや手幅で挙上距離を短くできる 左右を個別に制御するため技術の効果が限られる 技術を磨いた人ほどベンチプレスの記録が伸びて比率が下がる
セッティング ラックから外すだけで始められる 構えるまでに体力と技術が必要 重量が上がるほどダンベル側が不利になる
安全性 セーフティバーや補助者で潰れに対応しやすい 潰れたときにダンベルを安全に下ろす技術が必要 限界付近の重量を試しにくく、ダンベルの1RMが低めに記録される

特にパワーリフティングの競技経験がある人は、ベンチプレスの技術が高い分、一般的な換算の目安よりダンベルプレスの数値がかなり低く出る場合があります。これはダンベルプレスの実力が劣っているのではなく、種目の性質の違いが記録の差として現れていると考えるのが適切です。

4.2.3 上級者が換算値を使うときの注意点

上級者が換算値を活用する場合は、以下の点に注意してください。

  • ダンベルプレスの1RMを無理に測定しない。重いダンベルで限界まで挙げると、潰れたときに肩や肘を痛める危険が高くなるため、8〜12回程度で限界になる重量から推定するほうが安全です。
  • 換算値を目標重量にしない。比率が目安を下回っていても、前述の理由で生じる差であれば、無理にダンベルの重量を上げる必要はありません。
  • 両種目の記録を別々に管理する。換算値は大まかな比較に使い、成長の確認はそれぞれの種目の記録の推移で行います。

上級者にとって換算値は、ベンチプレスとダンベルプレスの重量を組み立てる際の出発点として使うものです。実際のトレーニングでは、換算値で決めた重量を数回試し、狙った回数をフォームを崩さずに行えるかで最終的な重量を判断することで、ケガのリスクを抑えながら両種目を伸ばせます。

5. まとめ

ダンベルプレスとベンチプレスの重量は、片手のダンベル重量を2倍した値がベンチプレスの約7〜8割になる、という目安で換算できます。ダンベルは左右を別々に安定させる必要があるため、合計重量が同じでもバーベルより扱える重量が小さくなります。

MAX重量を求める場合は、ダンベルで挙げた重量と回数をRM法の計算式(重量×(1+回数÷40))に当てはめます。10回以下で挙がる重量で計算すると、誤差を抑えやすくなります。換算値は左右の筋力差やフォームの習熟度で変わり、上級者ほどずれが大きくなる場合があります。実際の重量設定は換算値を基準にし、少しずつ調整してください。

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